【電子書籍化】最初で最後の一夜だったのに、狼公爵様の一途な愛に蕩かされました
「俺は今日、甘い香りに誘われて目を覚ました。これは番のものであると、本能的に理解した。香りの発生源をたどったら、きみだった」
「はあ……」

 嬉しいことのはずなんに、気のない返事をしてしまった。
 ルイスはそれほどに驚いていたのだ。
 彼に情けを望み、一夜をともにした。たった一度の思い出をもらって、それを抱いて生きていくつもりだった。
 なのに翌朝、彼は自分のことを番だと言う。朝起きたらわかった、と話すのだ。
 ルイスは思う。
 そんな都合のいいことある!? と。
 自分は彼の番ではない。彼はいつか別の人を見つける。そんな覚悟をしながらも、彼に抱かれた翌日にこれなのだ。
 都合がよすぎでは、と思ってしまうのも、無理はないかもしれない。
 もしかしたら、自分を抱いた責任を取るために、彼が嘘をついているのでは、とも思ったぐらいだ。
 しかし、グレンだって、昨夜のことは、一夜の思い出と割り切っていたはず。
 だからこその、あれだけの情熱的な時間だったのだろう。

「えっと……。女性の香りを、番のものだと勘違いしている可能性は?」

 男性は、女性からいい香りがすると思ったり、甘い匂いを感じたりすることがあると、聞いたことがある。
 女性のルイスだって、昨夜はグレンの香りに包まれてとてもいい気分になった。
 もしかしたら、グレンは女性の自分を抱いたことで、勘違いをしてしまったのではないか。
 そんな疑問を口にすれば、グレンは首をよこにふる。

「ない。たしかに前々から、きみからはいい香りがすると思っていたが、番のそれとは違う」

 グレンが片腕をベッドにつき、上体を持ち上げる。
 毛布がずれ、彼の逞しい肉体がさらされた。
 昨夜のことを思い出してしまい、ルイスは頬を染める。

「今なら断言できる。俺の番はきみだ。ルイス」

 グレンの銀の髪は、カーテンの隙間から差し込んだ朝日をうけて、きらめいた。

「……! 私が、あなたの、番? ……本当に? 貴族の女の初めてを奪った責任を感じているわけではなくて、本当に?」
「本当に、だ。なんなら、今からもう一度、きみを愛したっていい」

 そう言うと、グレンはルイスに覆いかぶさる。

「~~っ!」

 昨夜と同じ体勢、同じアングルに。男の下で、ルイスは硬直した。
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