【電子書籍化】最初で最後の一夜だったのに、狼公爵様の一途な愛に蕩かされました
 グレンのおかげで、ルイスはようやく食事にありつくことができた。
 ちなみに、ついでに服も用意してもらっており、ルイスは動きやすい簡素なワンピースに身を包んでいる。
 せっかくの昼食をありがたくいただきたいところだったが、彼女は食事を進めることなく、戸惑っていた。

「グレン様。昼食を用意していただけたことは、ありがたいのですが……。これは……?」
「え? 大変かと思って……」

 グレンの私室におかれた二人掛けの椅子に、並んで座り。
 彼は、当然のように、スプーンをルイスの口に向けて運び、食事を差し出していた。
 いわゆる「あーん」である。
 たしかに体力は相当に削られたし、身体もところどころ痛む。
 だが、自分で食事をとれないほど弱ってはいない。
 その旨を伝えると、グレンは「……嫌か?」と、ちょっと首を傾けながら、寂しげにそう言った。

「んっ……。んんっ……。嫌では、ありませんが……」

 その姿が、まるで飼い主に叱られたあと、そっと近づいてくる大型犬のようで。
 自分よりもずっと身長が高く、筋肉もしっかりついた逞しい男性のことを、可愛い、と思ってしまった。
 そんな顔を、そんな仕草をされたら、強く拒絶することはできない。
 
「じゃあ……いいか?」
「はい……」

 控えめにスプーンを差し出すグレンの可愛さといじらしさに負け、ルイスは「あーん」を受け入れた。

 これが、獣人と、その番……!

 ルイスはそれなりに衝撃を受けているが、受け入れてもらえたグレンはもうにっこにこである。
 これも美味しいよ、次はなにが食べたい? と、上機嫌にスプーンやフォークを動かし続ける。
 二人は仲のいい幼馴染だったから、グレンは元々、ルイスに対して優しかった。
 しかし、ここまでではない。
 番だとわかった途端に、ルイスを撫で、キスをし、手ずから食事を与える。
 こんなにも愛され、甘やかされることはなかった。
 彼のあまりの変わりっぷりに、「番を見つけた獣人って、すごいのね……」と思うルイスであった。
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