【電子書籍化】最初で最後の一夜だったのに、狼公爵様の一途な愛に蕩かされました
「それで、これからについてなんだが」
「は、はい」

 昼食を終えた二人は、今後についての相談を進めていく。
 ちなみに、ルイスの位置はグレンの膝の上である。
 この男、長年の片思いの相手が番だとわかった途端に、遠慮せずとことん愛する姿勢であった。
 グレンに後ろから抱き込まれる状態のルイスは、声をうわずらせながらも、なんとか話についていこうとしていた。

 ルイスは、腰まで届くふわふわの金髪に、優しい緑の瞳を持つ可憐な女性だ。
 女性としてもやや小柄なものだから、長身で体つきもしっかりしたグレンから見れば、愛らしい小動物のようだった。
 幼いころから彼女のことが好きだったグレンには、出会ったころからずっとルイスが国一番の美人に見えていたが、今はさらに輝いて見える。
 俺の番は世界一だな、と思いながら、グレンはルイスの髪を自分の指に絡ませる。

「……きみが俺の番だとわかったのは、昨日だということにしよう」
「昨日、ですか」
「ああ。そのほうが、いろいろと都合がいいだろう? 昨日、きみと一緒にいるときに、俺の番を見分ける嗅覚が発現。ルイスが番だとわかったうえ、俺たちは昔から両想いだったと判明する。そして、結婚の約束を……」
「私たち、両想いだったんですか?」
「……ん?」

 ここで、グレンは気が付く。
 自分も前から好きだったと、彼女に伝えていなかったことに。
 昨夜、ルイスは「前からあなたを慕っていた」とグレンに好意を伝えているが、グレンからは告白していない。
 グレンはルイスを己の膝に乗せたまま、自分の額を抑えた。

「……ずっと前からあなたのことが好きだったので、一夜でもいいからと、きみへの想いが消える前にと、我慢できず抱きました」
「あっ、はい……」

 これでは、ルイスからすれば、同情や哀れみで抱かれた翌日、番だからと愛されるようになった、と見えてもおかしくはない。
 自分の想いを伝えないまま彼女を抱いた己のしくじりに、グレンは思わず敬語になった。
 グレンがずうんと肩を落としたことを感じ取ったのか、ルイスもぎこちない。
 なんとも言えない沈黙が、場を支配した。
< 24 / 87 >

この作品をシェア

pagetop