【電子書籍化】最初で最後の一夜だったのに、狼公爵様の一途な愛に蕩かされました
「……まあ、そういうことだ。俺は元々、きみのことが好きだった。だから、きみが番だとわかったときは、心底嬉しかったよ」
「グレン様……」

 自分の想いを伝えずに手を出したことを、グレンは謝罪した。
 ルイスはそんな彼の手に触れ、無理を言ったのは自分だ、気にしないで欲しい、と笑った。

「今後のお話、でしたよね?」
「あ、ああ。そうだったな」

 最初にグレンが話した通り、番だとわかったのは昨日であると、話を合わせることに。
 ルイスの訪問、グレンの嗅覚の発現、ルイスが番だとわかる、両想いだったことが発覚。そして、結婚の約束をした。
 そんな順に進んでいき、その日のうちにお泊りをした。
 その流れであっても正式に婚約する前に手を出したことにはなるが、獣人とその番で、合意のうえだったのなら、ルイスが強く非難されることもないだろう。
 人間同士の貴族であったなら、婚約前になんてことを、と言われるかもしれない。
 しかし、相手の男であるグレンは獣人で、ルイスは彼の番。
 獣人と番のあいだに起きたことであれば、風当たりもそこまで強くないはずだ。
 それに、婚約前に行為に及んだことを把握することになるのは、両家の近しい者ぐらい。
 対外的には、二人はまだ清い関係である、ということにしてしまえばいい。

 さりげなく婚約、結婚の話が盛り込まれていたが、元から両想いだった番なのだから、まあ当然だろう。
 ルイスも、もちろん彼との婚約を受け入れた。

 大体そんな形で、二人の話はまとまった。
 話を合わせることには賛成しつつも、ルイスの表情には少し影が見える。
 自分から無理に迫ったというのに、結局、グレンに守られるような形になってしまったことを、申し訳なく思っているのだ。
 そんな彼女に、グレンはおどけてみせた。

「なに、婚約前に手を出した俺が、きみの父君に殴られるぐらいさ。それくらい軽いものだよ」
「な、殴るまではしないと思いますが……」
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