【電子書籍化】最初で最後の一夜だったのに、狼公爵様の一途な愛に蕩かされました
 ただの人間であるルイスはまだ、彼らの存在に気が付いていない。
 しかし聴覚も嗅覚もいいグレンは、弟妹が自分たちを覗き見ていることに気が付いていた。
 だが、そちらには目を向けない。
 どうした、と声をかけることもない。

 グレンは――兄の番に興味津々な二人に対して、邪魔だ、どっか行け、ぐらいに思っていた。
 ミリィとクラークも、グレンが自分たちに気が付きながら放置していることを理解しているので、さらにグレンへのあたりが強くなる。

「この家で暮らしていくのに、お義姉さまと関わるのは自分だけでいいとでも思っているのかしら」
「それって本当にルイス義姉さんのためといえるのかな? 味方は多いほうがいいと思うけどね」
「嫌ね、視野の狭い男は」
「独占欲が強すぎて、いつか愛想を尽かされそう」
「獣人のお兄様にとっては唯一の人でも、人間のお義姉様は他の人だって選べること、わかってないんでしょうね」
「僕、不安になってきたよ」

 小声ではあるが、グレンには全て聞こえている。
 流石に渋い顔になったグレンの耳が、音を拾おうとして動くものだから、ルイスも彼の様子がおかしいことに気が付く。

「グレン様? どうかしましたか?」
「あー……。いや……なんでも……」
「でも、お耳が……」

 ルイスは、彼の耳が示していたほうへ視線をやる。
 そこには、ドアの陰に半分身体を隠しながらも、ルイスが気が付いてくれた喜びでぱあっと笑顔を見せるミリィと、ひらひらと手を振るクラークの姿があった。
 
――み、見られてた!?

 二人きりだと思い、グレンにぴっとりとくっついていたらこれである。
 ルイスは、

「気が付いていたなら、言ってください!」

 と、涙目でグレンに抗議した。
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