緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長

プロローグ

 アレリード王国の王都バルリングの端っこに、「ブルーメ」という小さな花屋があった。

「よう、アン。いくつか花を見繕ってくんねーか?」

「あ、いらっしゃいませ! 中へどうぞ!」

 アンと呼ばれた少女──アンネリーエは、人懐っこい笑顔を浮かべ、花を買いに来た客を迎え入れる。

「今日はガーベラがおすすめです! 色も豊富なので、飾った場所が華やかになりますよ!」

「へぇ。いいねぇ! じゃあ、それを適当に五本頼むわ」

「有難うございます! 少々お待ち下さいね!」

 ガーベラはすらりと伸びた茎の先に、丸く大きい一輪の花弁がついている花だ。しかし同じ長さのままだと花弁が大きい分見栄えが悪い。
 アンネリーエはガーベラの茎を切り、花弁が重ならないよう高低差を付けてバランス良く束ねると、クルッと包装紙に巻いて男性客に手渡した。

「お待たせしました! はい、どうぞ!」

「おう! サンキューな!」

「ありがとうございました!!」

 会計を済ませ、去っていく客を見送ったアンに、別の客が再び声を掛けてきた。

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