緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長
「アンちゃーん! 今日お母さんのお誕生日でね、花束をプレゼントしたいんだけど、どの花が良いかわからないの。相談に乗って貰ってもいいかな?」

「わぁ! お誕生日なんですね! おめでとうございます! じゃあ、お母様の好きな色を教えて貰えますか?」

 アンネリーエが一人で切り盛りする花屋「ブルーメ」は、小さい店ではあるものの、所狭しと鮮やかな花が陳列されていて、店を訪れる客をいつも和ませている。
 朗らかで元気なアンネリーエの気性も相まって、花屋「ブルーメ」はいつも人で賑わっていた。

 アンネリーエが住むこの国、アレリード王国は魔物の住む大森林が近くにあるため、魔物を狩って素材を武器や防具に加工し、輸出する事を主な産業としている。
 常に魔物の驚異に脅かされているこの国は長い間、精鋭揃いの騎士団を始めとした高い戦闘力を持つ衛兵、高ランクの冒険者が集まる冒険者ギルドなどに守られてきた。

 そんなアレリード王国は農地が少なく、大森林があるために作物を育てる土地もないので穀物や野菜など植物系の食料は他国からの輸入に頼っている。
 それは生花も同様で、国に流通している生花の殆どが輸入品だ。
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