緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長
 人で賑わう通りを20分ほど歩くと、商業ギルドのバルリング西支部に到着する。
 この国は王宮を中心にして国が作られているので、王宮の反対側にはバルリング東支部があるらしい。行ったことはないけれど。

 商業ギルドに入り受付を済ませ、外交部に通された私は担当の人に欲しい球根の種類や個数を伝える。

「……なるほど。今回は球根を複数ですね。恐らく問題なく入荷するでしょう。もしマイグレックヒェンをご希望でしたらお時間を頂いていましたけどね」

「今マイグレックヒェンは手に入らないのですか?」

「ええ、どうやら東支部の方で大量に注文が入ったらしく、次回の入荷は来年になるでしょうね」

 確かにマイグレックヒェンは可愛い花だけど、球根を買い占めるほど人気なのかというと疑問に思う。

(ま、特別必要じゃないし、注文は来年でも良いか)

「入荷には二週間程かかりますのでご了承下さい。お届け先は店舗でよろしいですか?」

「はい、問題ありません。どうぞよろしくお願いいたします」

 私は担当の人に挨拶をすると、商業ギルドを出て店に戻る。

(そう言えば今日の晩御飯どうしようかな……)

 先程の会話をすっかり忘れ、のんきに晩御飯のことを考えていた私は、全く気付いていなかった。

 自分には関係がないと思っていたこの時の会話が、フラグだったということを。
 




* * * * * *




❀花の名前解説❀

アネモーネ→アネモネ

トゥルペ→チューリップ

ヒュアツィント→ヒヤシンス
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