緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長
 私はこんなにショックを受けている原因が何なのか考える。

 ジルさんの爵位を聞いて、あまりの身分差に驚いて──……ああ、そうか。あの人は私には手が届かない人なんだと、知ってしまったからショックを受けたんだ。

 ──私はようやく、自分がジルさんに恋をしているのだと自覚した。

 ジルさんもヘルムフリートさんもすごく気さくだったから、これからもずっとこんな関係が続いていくものだと思いこんでいた。
 だけどジルさんは公爵で、騎士団長で英雄で……私が気軽に会える人じゃなかったのだと、もっと早く気付くべきだったのだ。

(だけどクラテールの鉢植えを作る約束してるし……。今から距離を置くのも違う……よね)

 ジルさんと親しくなれた今のこの状況はきっと、人生に一回だけ訪れるボーナスタイムなのだ。
 もうすぐこのボーナスタイムも終わるだろうから、それまではこの状況を楽しませて貰おう……と思うと、少し気が楽になってきた。

(……だから、これ以上深入りしちゃ駄目だ。あの美貌に惑わされたらいけない!)

 恋心を自覚した瞬間失恋するなんて、どれだけ私は運が悪いのだろう。

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