緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長
 最近、息子が娘たちの誕生日によく花束を贈っていた。その花束を受け取った娘達は大喜びで、大切に部屋に飾っていたのだ。

 あの時見た花束は色鮮やかで、娘達の雰囲気にも良く合っていた。さぞや腕が良い職人がいる店なのだろうと感心したのを覚えている。

(念の為『ブルーメ』以外の店も調べておいた方が良いだろうな……)

 慎重な性格のディーステルは、不測の事態が起こった時のことを考え、評判が良い生花店をリストに加えることにした。

 そうして、屋敷に戻ったディーステルを末の娘が出迎えてくれたのだが──……。

「お父様! わたくしお花屋さんで働きたいんですの!! とっても可愛いお店で、店主のアンさんがとても素敵な人ですの!! それはもう素晴らしい花束を作って下さるのよ!! お兄様も応援してくださるって!! わたくしをアンさんのお店『ブルーメ』で働かせてくださいまし!!」

「え? え? な、何だって?!」

 ──溺愛していると言っても過言ではない末っ子の言葉に、ディーステルはしばらく混乱したのだった。
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