緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長
 意外な人の声に、私が慌ててドアを開くと、ヘルムフリートさんとジルさんが立っていた。

「夜分すまない。急ぎの用件だったので、失礼を承知で訪問させて貰った」

「久しぶりだねアンさん。こんな時間にごめんね」

「いえ! 大丈夫です! あ、良かったら中へどうぞ!」

 季節は春になろうとしているとはいえ、夜はまだ寒い時期だ。外に立ちっぱなしなんてそんな失礼なことが出来るわけもなく、私はお二人を温室の中へと招き入れた。

「この温室も久しぶりだなぁ。ここってすっごく落ち着くよね」

「……む。それは同意だが、入り浸ろうと考えるなよ」

「えー、なにそれ。独り占めは良くないと思うな」

 私が温かいお茶を用意して持っていくと、ジルさんがヘルムフリートさんに何か注意をしていた。相変わらずお二人は仲が良い。

「あの、こちらをどうぞ。いつも同じものばかりで申し訳ないのですが」

 私は断りを入れながら、今朝大量に作ったプレッツヒェンの残りをお二人の前に置いた。

「うわぁ! 美味しそうだね! これ手作りだよね? アンさんが作ったの?」

「はい、簡単ですし、いつも作ってはいるのですが……」

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