緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長
 お二人が勘違いしてくれて助かった。私の魔法のことは秘密だと言われていたのに、こんなところでバレたりしたらジルさんから大目玉を食らうかもしれない。

「えーっと次は……っと」

 私はマイグレックヒェンのことを誤魔化すように作業に集中した。
 葉物を挿した土台にローゼやブプレリウム、ヴィッケにアドーニスレースヒェンを高低差に気をつけながらどんどん挿していく。
 ちなみに花を挿す時、高低差をつけると奥行きが出て華やかさが増し、自然な感じに仕上がるのだ。

「……ふぅ。こんなものかな?」

 最後にマイグレックヒェンを挿し、ようやく装花が完成した。
 温室で育てた花を総動員し、これでもか!というほどの量の花を使って作った装花は、自分でも会心の出来になったと思う。

「すごい! アンさんすごいです!」

「うわぁ……! 作業を見ていた自分でも驚くのに、明日初めて会場を見る人は腰を抜かすかもしれませんね」

「え、そうかな? だったら嬉しいな」

「いやいや、本当に素晴らしい出来ですよ! もっと自信持って下さい!」

「そうですよ! 王女殿下たちも大喜びされますよ!!」

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