緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長
「さすがにアンちゃん一人じゃ無理があるんじゃないか? いっそのこと正式に人を雇うのはどうだ?」

 ロルフさんが言っているのは、フィーネちゃんのようにお手伝いしてくれる人ではなく、ちゃんと雇用契約を結んだ人のことだろう。

「……それも無理なんですよね……」

 私の魔法のことが知られてしまう可能性があるから、人を雇うことは出来ない。いくら秘密にしていても、何かの拍子でバレてしまうかもしれないのだ。
 フィーネちゃんにもいつバレるかハラハラしているのに。

 結局ロルフさんは「また来るわ」と言って帰っていった。
 私はロルフさんの帰って行く後ろ姿を眺めながら、申し訳ない気持ちになる。

 ロルフさんを見送った後、私はお店のプレートを『閉店』にすると、温室へと向かった。
 そして花畑で花のお世話をしながら、今後のことを考える。

「うーん、これからどうしようかなぁ……」

 商売的には喜ばしいことなのだろうけど、個人的にはとても困ってしまう。
 昨日なんてお母さんに贈る花束が欲しいと、お店に買いに来てくれた子がいたのに、花が売り切れで断らなきゃいけなかったし……。

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