緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長
「その通り。あんなゴミのような中毒者たちでも役に立ちましたよ。さすがの私でもあの魔法に襲われていたら、ただではすみませんでしたからね」

 フライタークさんは随分用心深いらしく、私の様子を確認するために敢えて酔っ払いたちを仕向けたのだという。

「おかげでこの店に掛けられた術式にも気付きましてね。認識阻害の魔道具を用意してきたのですよ」

「な……っ!」

「邪魔者が来る前に、さっさと移動しましょうか。話の続きはそこでしましょう」

 フライタークさんが指をパチンと鳴らすと、封じられたかのように五感が遮断されて身動きが出来なくなる。恐らく、なにかの魔道具を発動させたのだろう。

 結局、私はろくに抵抗出来ないまま、意識を失ったのだった。
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