緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長
 アンネリーエは花畑を見渡すと、店で売るための花の選別を始める。
 店の敷地の10倍ほどある花畑には、アンネリーエが種や苗から育てた花が区画ごとに分けられ、すくすくと育っていた。
 その花の種類や量は、小さい店で売るには十分だ。

「あ、この子にしよう! きれいな色だしボリュームもあって丁度良いかも!」

 アンネリーエが見つけたのはリシアンサスという花だ。大きめの花弁には枝分かれした蕾が幾つかついているので、しばらく花を楽しむことが出来る。

 それからアンネリーエは頃合いの花を幾つか選ぶと、簡単に下処理をしてから、それぞれの花に合った水揚げを行う準備をする。

 ちなみに水揚げとは、花の茎が水を吸収しやすくなるように手助けをする作業で、「水切り」「水折り」「湯揚げ」などの処理の事をいう。

<我が生命の源よ 清らかなる水となりて 我が手に集い給え アクア=クリエイト>

 アンネリーエが呪文を唱えると、キラキラと光る粒子──魔力が手のひらに集まり、そしてうずまきながら水に変化する。

 大きなバケツに魔法で出した水を注ぐと、アンネリーエは下処理をした花達を入れていく。

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