緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長
作物が生産出来ない国の中にあっても、アンネリーエの花屋「ブルーメ」ではいつも新鮮な花が売られているので、王都では知る人ぞ知る隠れ家的な花屋となっている。
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西に傾いた陽の光を受け、街中がオレンジ色に染まる頃、花屋「ブルーメ」は少し早い閉店時間を迎える。
今日も一日の業務を終え、閉店準備を済ませたアンネリーエは店の裏口の扉を開く。扉の先には小さなキッチンとダイニングがあり、更にその先にもう一つ扉があった。
奥の扉を開くと、そこには色とりどりの花が育てられている花畑が広がっている。
そこはアンネリーエの店で売るための花々が栽培されている温室で、アンネリーエは花を仕入れるのではなく、自分で育てていたのだ。
花畑の天井はガラスで覆われており、温度管理がされているため、害虫や気候に左右される事が無く、屋外で花を育てるより安定した生産が出来るようになっている。
この温室はアンネリーエの祖父の時代から使われていて、アンネリーエの両親が他国に移り住んだ後、彼女へ相続されたものだった。
「さーて。明日はどの子にしましょうかね」