緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長
(あの扉の紋章は……どこかの貴族様の……?)

 馬車のドアに飾られた紋章を眺めていると、そのドアが開いてジルさんが降りてきた。

 私はドアが開くと同時に花が舞い散る幻影を見る。

 ただ馬車から降りてきただけなのに、ジルさんの振る舞いはとても優雅でまるで王子様みたいだった。
 馬車がすごく立派だったから、その相乗効果もあったのかもしれない。

「アンは買い物帰りか? 今からアンの店に向かおうとしていたのだが……」

「あ、はい。えっと、今日はお店がお休みなので、今のうちに必要なものを買っておこうと思いまして」

「む。今日は休業日だったのか」

「そうですけど、花束が必要でしたか? でしたらお得意さんですし、店に戻ったらお作りしますよ」

 お店は閉まっているけど、花だったら花畑に沢山咲いているので問題ない。

「ただ下処理をしないといけないので、ちょっとお待たせしてしてしまいますけど」

「いや、今日は花束ではなくてだな……」

 もしお急ぎだったら申し訳ないな、と思っていたけれど、今日は別件で来たらしい。

「……取り敢えず重いだろう? 店まで送らせてくれないか?」

< 73 / 238 >

この作品をシェア

pagetop