緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長
 ジルさんが自然な動作で私の荷物を持ち、手を差し出してくれる。正直重かったので有り難いけれど、立派な馬車に乗るのは気が引けてしまう。

「え……でも……」

 こんな立派な馬車に私が乗って良いのかな、と逡巡していると、馬車の中からジルさんとは違う男の人の声がした。

「初めまして。僕はジギスヴァルトの友人のヘルムフリート・ローエンシュタインです。もし遠慮してるなら気にせず乗ってくれたら嬉しいんだけど」

 ヘルムフリートと名乗るジルさんの友人は綺麗な顔をしていて、とても優しそうな人だった。

 私がちらっとジルさんを見ると、ちょっと悲しそうな……垂れている耳の幻覚が見えたので、思わずジルさんの手を取ってしまう。

「あ! えっと、では遠慮なく! よろしくお願いします!」

 私が馬車に乗ると、ジルさんは嬉しそうに微笑んでくれた。
 そんな私達を見たヘルムフリートさんはとても楽しそうにしている。

「えっと、アンさん、でいいのかな?」

「挨拶が遅れて申し訳ありません。私はアンネリーエと申します。周りの人達にはアンと呼ばれているので、よろしければそうお呼び下さい」

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