まじないの召喚師2 ー鬼の子と五大名家ー

「桃木野も引っ込め。我らが家だ。お前達は黙って我らの役に立てばよい」



「当主とは、先頭に立ち、部下を守り、一般人を守るのが仕事だろう」



「今まで誰が、無力なお前達を守ってきたと思ってる! 今度はお前達が我を守る番だ!」



「……それは、世代交代ととってよいか?」



「何?」



「当主は、引退する、ということでよろしいかと聞いている」



無力な人たちを守らないというのなら職務放棄とみなす、と常磐は言っている。



「くそっ……」



最後の一人。

火宮当主が進み出る。



「我の出番のようだな。いいか貴様ら。我々は部下達の脱出経路を確保する為にだな…」



「御託はいい。もう十分だ」



先輩は聞くつもりがない。

逃げることを正当化する当主達。

戦うことを美徳とする次期当主達。

どうせ会話は平行線だ。



「流れ的には陽橘が答えるべきなんだろうが、ここには居ないしな。俺で我慢してくれ」



「何を言って…!」



「要は、被害者がいなくなればいいんだろ? ……ツクヨミ」



「お任せあれ」



ツクヨミノミコトは先輩を盾に顔だけだして、右手を額に当て敬礼する。



「何をする気だ!」



「お? なんだ、やるのか? テメェらみてえな腰抜けには勝つ自信しかないね」



刀に手をかける先輩の、悪い笑みを見た腰抜け当主は怯えて尻餅ついた。

実力不足を理由に、先輩を処分しようとする人がこれなのだ。

笑ってしまうね。


で、先輩はツクヨミノミコトに何をさせるつもりだろうか。



『あははっ、私は気づいているよ。大船に乗ったつもりで、私に任せるがいい』



『よろしくお願いします』



諸々はツクヨミノミコトに任せよう。

だが、屋敷の破壊行為を忘れたわけじゃない。



『くれぐれも、大惨事にはしないようにお願いしますね』



『もちろん! 何かあっても先輩のせいだよ!』



『責任転嫁!』



『私は先輩の命令に従っただけ。つまり、何があっても先輩のせいだからね。月海は心配しないで』



何をする気なんだろう。

……とても不安だ。

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