転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!
10
「けけけ、結構です! 乱せば、よいのでしょう? 自分でやりますわ!」
逃げようとした私だったが、逆にきつく抱き込まれてしまった。アルベール様が、耳元で囁く。
「ご自分でなさったのでは、リアリティが出ないと思いますよ。男の目の付け所は、また違いますからね」
知らないでしょう? と言われた気がして、またしても顔が熱くなる。本来ならば、身持ちが堅いというのは、褒められるべきこと。でも、自分が男性に人気が無いと承知しているだけに、何だかひがんでしまう。
「ということで、失礼しますよ」
アルベール様は、私の胸元を緩めにかかった。一見粗野な振る舞いだが、素肌に触れないよう気遣っているのがわかって、私はおやと思った。同時に、その手つきが慣れていることにも気付く。
(そりゃそうよね。恋愛どころではなかったと仰っていたけれど、こんな素敵な方だもの。経験が無い方がおかしいわ……)
「これくらいにしておきましょう」
ようやくアルベール様の手が離れると、私はほっと胸を撫で下ろした。だが彼は、私の体を抱いたまま、放そうとしない。
「あの……、アルベール様?」
さすがに抗議しようと顔を上げれば、彼は微笑を浮かべていた。目が合い、ドキリとする。
「怯えすぎ。そんなことでは、恋人同士に見えませんよ?」
「そんなこと仰られても……」
「だから、しばらくこうしていましょう。あなたが慣れるまで、ね」
反論の言葉が見つからず、私は黙り込んだ。確かに、アルベール様と私が恋人同士だなんて、ただでさえ唐突な話なのに。よそよそしい態度を取っていたら、ますます疑われるだろう。殺人犯として捕まらないためには、ここは辛抱しないといけないのかもしれない……。
とはいえ、男の人と触れ合うなんて、初めての経験だ。心臓は、今にも破れんばかりの勢いで、激しく脈打っている。終始余裕のアルベール様とは、対照的だ。
「俺たち二人が見つかるのと、死体が見つかるのと、どちらが早いですかね。賭けましょうか?」
私を抱きしめたまま、アルベール様はそんな軽口さえ叩いている。
逃げようとした私だったが、逆にきつく抱き込まれてしまった。アルベール様が、耳元で囁く。
「ご自分でなさったのでは、リアリティが出ないと思いますよ。男の目の付け所は、また違いますからね」
知らないでしょう? と言われた気がして、またしても顔が熱くなる。本来ならば、身持ちが堅いというのは、褒められるべきこと。でも、自分が男性に人気が無いと承知しているだけに、何だかひがんでしまう。
「ということで、失礼しますよ」
アルベール様は、私の胸元を緩めにかかった。一見粗野な振る舞いだが、素肌に触れないよう気遣っているのがわかって、私はおやと思った。同時に、その手つきが慣れていることにも気付く。
(そりゃそうよね。恋愛どころではなかったと仰っていたけれど、こんな素敵な方だもの。経験が無い方がおかしいわ……)
「これくらいにしておきましょう」
ようやくアルベール様の手が離れると、私はほっと胸を撫で下ろした。だが彼は、私の体を抱いたまま、放そうとしない。
「あの……、アルベール様?」
さすがに抗議しようと顔を上げれば、彼は微笑を浮かべていた。目が合い、ドキリとする。
「怯えすぎ。そんなことでは、恋人同士に見えませんよ?」
「そんなこと仰られても……」
「だから、しばらくこうしていましょう。あなたが慣れるまで、ね」
反論の言葉が見つからず、私は黙り込んだ。確かに、アルベール様と私が恋人同士だなんて、ただでさえ唐突な話なのに。よそよそしい態度を取っていたら、ますます疑われるだろう。殺人犯として捕まらないためには、ここは辛抱しないといけないのかもしれない……。
とはいえ、男の人と触れ合うなんて、初めての経験だ。心臓は、今にも破れんばかりの勢いで、激しく脈打っている。終始余裕のアルベール様とは、対照的だ。
「俺たち二人が見つかるのと、死体が見つかるのと、どちらが早いですかね。賭けましょうか?」
私を抱きしめたまま、アルベール様はそんな軽口さえ叩いている。