転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!

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「でかした、エミール」



 アルベール様は、満足そうに頷かれた。



「大手柄です。夕食のプディングは、増量してやりましょう」

「それにしても。バール男爵は、一体誰を殺したというのかしら?」



 私は、首をひねった。



「高貴な方……。九年前……」



 アルベール様が、呟く。私たちは、同時にあっと声を上げていた。



「王妃殿下!?」

「で、でも……。殿下は、幽閉先で自害なさったのでは?」



 スキャンダルが発覚し、国王陛下のお怒りを買って幽閉された、マルク殿下のお母様である。名門公爵家のご出身である彼女は、たいそうプライドの高い方だったという。幽閉という屈辱に耐えかねたのだろうと、誰もが納得したのだが……。



「自害に見せかけて、殺したのかもしれませんね」

「バール男爵と王妃殿下に、どんな繋がりがあると言いますの?」

「繋がりは、無いでしょうね。彼は、金が絡めば何でもする男だ。誰かに頼まれたのでしょう」



 依頼主は一体誰だろう、と私は考えを巡らせた。普通なら、ライバルの側妃たちが怪しいところだが。だが、ジョゼフ五世陛下のご側妃は、ドニ殿下のお母上お一人だ。しかも彼女は、王妃殿下より前に亡くなられている。



「何となく、見えてきた気はしますね。王妃殿下を狙うくらいだから、依頼主はある程度の力を持った人間でしょう。その人物の依頼を遂行した報酬として、オーギュストは男爵の爵位を得たのではないでしょうか。いくら金を積んだとはいえ、一介の商人である彼が爵位を得るなんて、相当な地位にある人間の口利きが無ければ、難しいですからね」



 確かに、バール男爵が爵位を得たのは九年前だ。成功報酬と考えれば、辻褄は合う。そして、秘密を知った仲間・ピエールを殺した……。



「ひとまずは、エミールがその記録を持ち帰るのを待ちましょう。もしかしたら、今回の事件にも繋がっているかもしれません」



 ええ、と私は頷いたのだった。
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