転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!

6

 マルク殿下は、面白そうに頷かれた。



「なるほど。確かに、ローズ嬢にはお似合いの花ですな。モニク嬢は、上手いことを仰る……。いいでしょう、仰せの通りに」

「まあ、寛大なお言葉、ありがとうございます」



 私は、ほっと胸を撫で下ろした。そんな中、ローズは一人、わけがわからないといった様子できょとんとしている。だが、マルク殿下が自分より私を評価したことだけは、悟ったらしい。彼女は私を見すえると、挑戦的に言い放った。



「マルク殿下がお義姉様をお待ちの間、私、代わりにお相手をさせていただきましたのよ。三日後の鷹狩りについて、お話を伺っていたのですわ。殿下も、参加なさるのですって」



 エミールが言っていた、国王陛下ご主催の鷹狩りか、と私は思い出した。ご参加できるほどご体調が回復されたのなら、喜ばしいことだけれど。



「それでね、お義姉様」



 ローズは、いよいよ得意げな顔つきで私を見た。



「マルク殿下は、私をその際のパートナーに選んでくださったのよ」

「あら、そうでしたの?」

 

 鷹狩りは、単なる狩りではなく、ちょっとしたイベントだ。狩りが終わった後、参加した男性貴族らは、そのままピクニックタイムに入る。その際彼らは、仕留めた獲物を、パートナーである女性に献上するのが慣例になっていた。たいていは、夫人や恋人、近しい親族の女性がパートナーを務めるのだが。ローズは、その役をゲットしたというのか。



「お義姉様は? 当然、アルベール様のパートナーですわよね?」

「それは……」



 そういえば、彼はそのことについて何も話さないな、と私は思った。エミールに言いくるめられて、渋々ながら参加を決めたはずだけれど。



「まああっ。まさかとは思いますけれど、申し込まれていないんですの?」



 ローズが、ことさらに甲高い声を上げる。



「こんなに、親しくなさっているのに? 今日も、ずいぶん長い間、ミレー邸でお過ごしでしたわよね。確かお父上と弟君は、辺境をご訪問中だとか。お母上も、今日はご不在と伺っていた気がするのですけれど。つまり……」



 そこでローズは、言葉を濁した。私は、彼女をキッとにらみつけた。



「何を想像しているのか知らないけれど、アルベール様とは、事件の話をしていただけよ」



 そこへ加勢してくださったのは、マルク殿下だった。



「ローズ嬢。はしたない想像をなさったり、それを口にしたりなさると、品性を疑われますぞ。そろそろ、本題に入らせていただいて、よろしいかな? 実は私は今日、モニク嬢への謝罪に伺ったのです」
< 103 / 228 >

この作品をシェア

pagetop