転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!

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「謝罪、でございますか」

「その通りです」



 マルク殿下は、私を真っ直ぐに見つめられた。



「あなたを犯人扱いして、まことに申し訳なかった。謝って済む話ではないが、ご無礼をお許しいただきたい」



(それを言いに、わざわざいらっしゃったというの……?)



 私は、慌ててお返事申し上げた。



「とんでもありません。あの状況では、疑われて当然ですわ。私、何も気にしておりませんので」

「そう言ってくださってありがたい」



 マルク殿下は、ほっとしたようなお顔をなさった。



「しかも、自ら言い出しておきながら、体調を崩して捜査の指揮が執れないとは……。ミレー公爵によると、あなたは、そんな私をご心配くださったとか。それを聞いて、ますます申し訳なくてね」

「いえ、当然のことですわ……」



 ミレー公爵が、私のことを話してくださったとは知らなかった。私は、内心驚いた。



「私も体調が回復しましたし、あなたの名誉回復のためにも、真犯人捜しに取り組もうとしたのですがね。モンタギュー侯爵が、えらく張り切っておられて。意地とでも捕まえてみせる、と意気込んでいるので、結局お任せすることに決めました」



 そしてマルク殿下は、思いがけないことを言い出された。



「それにしても、真犯人は、なかなか手強そうですな。……いえ、モンタギュー侯爵から聞いたのですが。この前彼が、こちらの門番に尋問をした際、門番はしきりに顎を撫でていたそうです。それは、彼が嘘をつく際の癖なのだとか。コレットという、あなたの侍女が教えてくれたそうです」



 確かにあの時は、コレットに代わりに尋問に立ち会ってもらったが。そんな細かいことを、見ていたとは。しかも彼女は、サリアン邸に来て間も無いというのに……。感心していると、マルク殿下は微笑まれた。



「あなたの侍女は、ずいぶん優秀なようですな。侯爵も、たいそう評価しておられました」



 すると、ドニ殿下が仰った。



「しかし、森番も不審な男を見たと言っているのでしょう? 二人が証言している以上、犯人は男で間違い無いのでは? ……ええと、確か黒髪の男、と言っていましたね?」
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