転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!

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 アンバーは、一瞬絶句した後、まくし立て始めた。



「そんな……! ご冗談ですよね? 私とモニクお嬢様の仲ではありませんか!」

「信頼を裏切るような真似をしたのは、あなたでしょ」

「だけど……」



 アンバーは私に詰め寄ろうとしたが、アルベール様にぎろりとにらまれて、口をつぐんだ。私は、そんな彼女の元へ歩み寄ると、静かに告げた。



「でもね、あなたの言うことも、一理あると思うの。卑屈でおどおどしていたのは、本当のことだわ。でももう、そういう所は改めることにしたの。これからは自信を持って、自分の意見をハッキリ言うことにするわ」

「それが、私の解雇ってことですか」



 アンバーは、唇をゆがめた。



「考え直してくださいよ。モニク様との付き合いはもう終わりなんだから、私がこの家にいたって関係無いじゃないですか」



 嫁に行くから、ということか。花婿はいなくなったんだけどな、と私は密かに思った。



「あなたのような人を雇うのは、サリアン家のためにならないわ。お父様には、そう申し上げておきます」



 なおもアンバーが口答えしようとした、その時だった。遠くで、悲鳴が上がった。同時に、大勢の人間がバタバタと走り回る気配がする。



(ついに、死体が見つかった……!?)



「何事かしら?」



 他の二人の侍女たちは、そわそわし始めた。



「アンバー、取りあえず行きましょうよ。モニク様のご決心は固いようだし……。何が起きたのか、気になるわ」



 好奇心に勝てなかったのだろう。二人は、アンバーを連れて部屋を出て行った。アルベール様と二人きりになると、私は彼をキッとにらみつけた。



「アンバーを叱ってくださったことには、感謝しますわ。でも、どうしてキスなんて? やり過ぎですわよ」

「インパクトは強い方がいいでしょう。それに俺は、賭けに勝った。あれは戦利品です」

「私は、賭けなんて承諾した覚えはございませんわよ!」



 語気を強めて言えば、アルベール様はなぜかふっと笑われた。



「少しは、主張できるようになってきたじゃないですか」

「……!」



 前世の記憶が戻ったおかげかしら、と私はぼんやり思った。 



「さて、いよいよ死体発見、か。事態はどう転ぶかな」



 アルベール様は、けろりとそう呟いている。その横顔は、まるで事件を楽しんでいるかのようだった。
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