転生したら伯爵令嬢でした（ただし婚約者殺しの嫌疑付き）。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます！

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「いや、でも……。馬車を待たせているし」



　アルベール様はためらわれたが、モーリスはやけに積極的だった。



「先にお帰りくださいと、お伝えしておきます。帰られる際も、ご心配無く。新しく雇った門番は、酒好きでしてな。今から居酒屋へ行ってよいと言えば、喜んで飛んで行くはず。その間、ごゆっくりお過ごしくださいませ」



　偽証が発覚したガストンは、逮捕されると共に、サリアン家を解雇されたのである。そんこで急遽、新しい門番を雇い入れたのだ。



「じゃあ、そうさせていただこうかな」



　アルベール様は私をご覧になると、片目をつぶった。私は、彼に従うことにしたのだった。





　

　私の部屋でアルベール様とお会いするのは、久々だ。前回はまさに、アンバーが殺された夜だった。こうして二人で過ごしている時に、彼女はドニ殿下に絞殺されたのかと思うと、身震いしたくなる。



　向かい合ってソファに腰かけると、アルベール様は軽く苦笑された。



「それにしても、あなたのお屋敷には、ロクな門番がいませんね。賄賂を受け取って偽証する男に、酒につられて職務放棄する男」

「はあ……」



　その通りなので、返事に困る。お父様に、人を見る目が無いせいなのだ。おまけに、モーリスが忠告したところで、耳を貸しやしないときた。



「でも。あなたにはもう、関係が無いことですね」

「はい？」



　意味がわからず、私はきょとんとした。するとアルベール様は、ソファから立ち上がると、私の目の前に跪かれた。



「なぜならあなたは、間も無くミレー家の一員になられるからです」



　彼は、懐から小箱を取り出すと、私の前で蓋を開けられた。



「受け取っていただけますか」