転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!

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「アルベール……様」



 目の前の小箱の中では、ダイヤとルビーがあしらわれた指輪が、燦然と輝いていた。紛れも無くミレー公爵家の家紋が彫られていて、これは現実だと知らせてくれる。



「俺の出生のことも、パーティーの夜のことも。何もかも承知した上で、あなたは俺を受け入れてくださった……。その日から、超特急で作らせたのです」



 アルベール様が微笑む。私は、何だか泣きそうになった。



「ありがとうございます……。もう、何て申し上げたらいいのか……。言葉が……」



 出て来ないわ、という台詞すら、ちゃんと形になってくれない。アルベール様は、そんな私の顔を、愛おしげに見つめた。



「一言で、いいんですよ。『はい』」

「……はい」



 かろうじてこくんと頷くと、アルベール様のお顔にはパッと笑みが浮かんだ。



「ありがとう」



 彼は、私の指に指輪をはめると、その指に軽く口づけた。そして身軽に立ち上がり、私の隣に腰を下ろす。



「正式な申し込みは、明後日にいたします。その日、父がティリナから戻るのでね。一緒に、こちらへ参ります」

「明後日ですか!?」



 私は、驚いた。



「そう。今日のドニ殿下の、苦し紛れの弁明のおかげで、俺の嫌疑は晴れました。これで堂々と、申し込みに来れますよ。……もちろん、殿下に感謝するつもりなど、さらさらありませんが」

「でも……」



 作戦は、どうなさる気だ。口ごもる私を見て、アルベール様はちょっと眉をひそめた。



「もういいでしょう? 別れたフリも、終わりで。あなたを犯人に仕立てることにも、俺を犯人に仕立てることにも、殿下は失敗なさった。利用目的であなたを口説くことも、もう無いでしょう。第一、話を聞き出そうにも、殿下は謹慎中です。近付けやしないでしょう?」
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