転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!

11

「……とんでもない。何を想像なさっているのです? 愛するあなたを、手にかけるわけが無いでしょう」



 脅しが効いたのか、ドニ殿下が微笑む。無理に作ったような笑いだった。



「どうぞ、こちらに来ていただけませんか。ゆっくり、お話ししましょう」



 殿下は、再びベッドへ戻ると、枕元に腰かけられた。少しためらったが、従うことにする。私は、彼から距離を置いて、ベッドの足元に腰を下ろした。



「ロケットが森の中に落ちていた理由ですが……。お疑いの通りです。僕は、アンバーを殺しました」



(ついに、白状した……!)



 私は、心が躍るのを必死に抑えた。廊下の方を見ないように自らを戒めながら、次なる質問を投げかけようとする。ところが殿下は、とんでもない言葉を続けた。



「でもそれは、モニク嬢、あなたのためです」

「……はい?」



 何を言い出す気だ、と私は身構えた。



「鷹狩りの際にも申しましたが、僕はあなたとの仲を取り持ってもらうために、アンバーに近付きました。ですが彼女は、僕に恋をしてしまったようなのですよ。あなたに嫉妬した彼女は、バール男爵殺しを機に、あなたを犯人に仕立て上げようと企んだのです。手袋にショール、短剣、そしてブローチを利用して……。アンバーの暴走を止め、あなたを守るためには、ああするしかありませんでした……」



「短剣、ですか」



 私は、繰り返した。口を滑らせたことに気付いたのが、殿下はハッと口をつぐまれた。



「公になった証拠は、手袋とショール、ブローチだけですわ。短剣は、私の父が隠蔽しました。それなのに、殿下はなぜご存じなのかしら?」

「それは……。アンバーから聞いて……」

「ドニ殿下」



 私は、静かに彼の言葉をさえぎった。



「誤魔化すのは、もうお止しになってくださいませ。私は、全て知っているんですの。九年前、あなたは王妃殿下を殺害した。その片棒を担いだバール男爵に強請られ、彼をシモーヌ夫人と共に殺害。アンバーは、私の所持品を盗ませる目的で利用していたけれど、サリアン邸を解雇されて用済みになったから殺した。ついでに言えば、マルク殿下にも毒を盛っておられる。そうでございましょう?」



 ドニ殿下のお顔は、みるみるうちに青ざめていった。



「馬鹿を言うな。一体、何の証拠が……」

「見ておりましたから。この目で。シモーヌ夫人を刺した凶器は、短剣でしたわね。その柄は黒地で、金の模様がありましたわ」



 私の脳裏には、あのむごたらしい殺人の光景がまざまざと蘇っていた。殿下が使っていた短剣は、私の物とは違う、もっと殺傷力の高そうなものだった。血が付いていた私の短剣は、私を陥れるために、フェイクとして用意したのであろう。
< 165 / 228 >

この作品をシェア

pagetop