転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!
11
「……とんでもない。何を想像なさっているのです? 愛するあなたを、手にかけるわけが無いでしょう」
脅しが効いたのか、ドニ殿下が微笑む。無理に作ったような笑いだった。
「どうぞ、こちらに来ていただけませんか。ゆっくり、お話ししましょう」
殿下は、再びベッドへ戻ると、枕元に腰かけられた。少しためらったが、従うことにする。私は、彼から距離を置いて、ベッドの足元に腰を下ろした。
「ロケットが森の中に落ちていた理由ですが……。お疑いの通りです。僕は、アンバーを殺しました」
(ついに、白状した……!)
私は、心が躍るのを必死に抑えた。廊下の方を見ないように自らを戒めながら、次なる質問を投げかけようとする。ところが殿下は、とんでもない言葉を続けた。
「でもそれは、モニク嬢、あなたのためです」
「……はい?」
何を言い出す気だ、と私は身構えた。
「鷹狩りの際にも申しましたが、僕はあなたとの仲を取り持ってもらうために、アンバーに近付きました。ですが彼女は、僕に恋をしてしまったようなのですよ。あなたに嫉妬した彼女は、バール男爵殺しを機に、あなたを犯人に仕立て上げようと企んだのです。手袋にショール、短剣、そしてブローチを利用して……。アンバーの暴走を止め、あなたを守るためには、ああするしかありませんでした……」
「短剣、ですか」
私は、繰り返した。口を滑らせたことに気付いたのが、殿下はハッと口をつぐまれた。
「公になった証拠は、手袋とショール、ブローチだけですわ。短剣は、私の父が隠蔽しました。それなのに、殿下はなぜご存じなのかしら?」
「それは……。アンバーから聞いて……」
「ドニ殿下」
私は、静かに彼の言葉をさえぎった。
「誤魔化すのは、もうお止しになってくださいませ。私は、全て知っているんですの。九年前、あなたは王妃殿下を殺害した。その片棒を担いだバール男爵に強請られ、彼をシモーヌ夫人と共に殺害。アンバーは、私の所持品を盗ませる目的で利用していたけれど、サリアン邸を解雇されて用済みになったから殺した。ついでに言えば、マルク殿下にも毒を盛っておられる。そうでございましょう?」
ドニ殿下のお顔は、みるみるうちに青ざめていった。
「馬鹿を言うな。一体、何の証拠が……」
「見ておりましたから。この目で。シモーヌ夫人を刺した凶器は、短剣でしたわね。その柄は黒地で、金の模様がありましたわ」
私の脳裏には、あのむごたらしい殺人の光景がまざまざと蘇っていた。殿下が使っていた短剣は、私の物とは違う、もっと殺傷力の高そうなものだった。血が付いていた私の短剣は、私を陥れるために、フェイクとして用意したのであろう。
脅しが効いたのか、ドニ殿下が微笑む。無理に作ったような笑いだった。
「どうぞ、こちらに来ていただけませんか。ゆっくり、お話ししましょう」
殿下は、再びベッドへ戻ると、枕元に腰かけられた。少しためらったが、従うことにする。私は、彼から距離を置いて、ベッドの足元に腰を下ろした。
「ロケットが森の中に落ちていた理由ですが……。お疑いの通りです。僕は、アンバーを殺しました」
(ついに、白状した……!)
私は、心が躍るのを必死に抑えた。廊下の方を見ないように自らを戒めながら、次なる質問を投げかけようとする。ところが殿下は、とんでもない言葉を続けた。
「でもそれは、モニク嬢、あなたのためです」
「……はい?」
何を言い出す気だ、と私は身構えた。
「鷹狩りの際にも申しましたが、僕はあなたとの仲を取り持ってもらうために、アンバーに近付きました。ですが彼女は、僕に恋をしてしまったようなのですよ。あなたに嫉妬した彼女は、バール男爵殺しを機に、あなたを犯人に仕立て上げようと企んだのです。手袋にショール、短剣、そしてブローチを利用して……。アンバーの暴走を止め、あなたを守るためには、ああするしかありませんでした……」
「短剣、ですか」
私は、繰り返した。口を滑らせたことに気付いたのが、殿下はハッと口をつぐまれた。
「公になった証拠は、手袋とショール、ブローチだけですわ。短剣は、私の父が隠蔽しました。それなのに、殿下はなぜご存じなのかしら?」
「それは……。アンバーから聞いて……」
「ドニ殿下」
私は、静かに彼の言葉をさえぎった。
「誤魔化すのは、もうお止しになってくださいませ。私は、全て知っているんですの。九年前、あなたは王妃殿下を殺害した。その片棒を担いだバール男爵に強請られ、彼をシモーヌ夫人と共に殺害。アンバーは、私の所持品を盗ませる目的で利用していたけれど、サリアン邸を解雇されて用済みになったから殺した。ついでに言えば、マルク殿下にも毒を盛っておられる。そうでございましょう?」
ドニ殿下のお顔は、みるみるうちに青ざめていった。
「馬鹿を言うな。一体、何の証拠が……」
「見ておりましたから。この目で。シモーヌ夫人を刺した凶器は、短剣でしたわね。その柄は黒地で、金の模様がありましたわ」
私の脳裏には、あのむごたらしい殺人の光景がまざまざと蘇っていた。殿下が使っていた短剣は、私の物とは違う、もっと殺傷力の高そうなものだった。血が付いていた私の短剣は、私を陥れるために、フェイクとして用意したのであろう。