転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!

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 お父様とバルバラ様、そして私は、固唾を呑んでアルベール様を見つめた。彼は、ちょっと思案するような顔を見せた後、あっさり頷いた。



「承知しました。保留といたしましょう!」



 私は、きょとんとした。



(本当に、何を考えてらっしゃるの。申し込んでみたり、あっさり引き下がってみたり……)



「おお、寛大なお言葉、ありがとうございます」

「申し訳ございませんわあ」



 お父様とバルバラ様の、お顔がほころぶ。アルベール様は、飄々と続けた。



「同じ過ちを繰り返すまいと、つい焦ってしまいましたが。確かに、お二人の仰る通りですね。結婚話は今しばらく棚上げとしまして……。ですが」



 彼は、にっこり笑った。



「当面は、こちらを訪問してモニク嬢とお会いすることを、お許しいただきたい。バルバラ夫人が仰った通り、彼女は優しい性格ですから。今回の事件は、さぞショックだったことでしょう。私は、そんな彼女の傍に寄り添って差し上げたいのです」



 バルバラ様のお顔が引きつる。自分の発言が裏目に出た、と思ったのだろう。お父様も、困ったような表情を浮かべられたが、さすがに断る理由が思いつかなかったのだろう。渋々ながら、頷かれた。



「ご配慮、ありがとうございます。大してお構いもできませんが、それでもよろしければ、是非いらしてください」

「モニク嬢と共に時間を過ごせれば、それで十分です」



 もう一度微笑んでから、アルベール様は席を立たれた。すかさず、バルバラ様も立ち上がられる。



「ではアルベール様、お見送りを……」



 だが、そんな彼女の言葉をさえぎる声がした。



「アルベール様!」



 いそいそと応接間に入って来たのは、モーリスだった。



「お話は、お済みでございますか。でしたら是非、ご案内したい場所が」

「ちょっと、モーリス! あなた、何を勝手な……」



 バルバラ様は気色ばんだが、モーリスはそれを無視して続けた。



「我が屋敷の誇る庭園を、是非ご覧いただきたいのです。モニク嬢の母君の好みで作ったものなのですが、大変美しくてですね」

「そうですか。それでは、見せていただこうかな」



 アルベール様が頷く。どうぞどうぞ、とモーリスは声のトーンを上げた。



「では、早速ご案内しますね!」



 そしてモーリスは、私に軽く目配せしたのだった。
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