転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!

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 二十分後。私とアルベール様は、庭園にいた。



「こちらから言い出そうと思っていたところ、お節介な執事さんのおかげで助かりました。二人で話したかったんですよ」



 戯れるように花々に触れながら、アルベール様はそう仰った。



「あなたが来られる前に、サリアン伯爵に探りを入れていたのですが。今のところ昨夜の事件は、物盗りの犯行とみなされているようですね」

「……ああ、よかったですわ」



 私は、ほっと胸を撫で下ろした。



「アルベール様のおかげですわね。ありがとうございます」

「まだ、油断はできませんがね」



 アルベール様は、私をじろりと見た。



「何せ、あなたは記憶が無いのでしょう? そこが一番のウィークポイントだと思うのですよ。疑われるきっかけになりかねない」

「そうだわ、実は早速、危ないことがありましたの」



 私は彼に、モーリスとブローチの一件を話した。



「何とか誤魔化せましたし、彼なら私を信じてくれると思うのですけれど……」

「でも、いつもそう上手くいくとは限りませんからね」



 アルベール様は、ちょっと思案するような顔をされた。



「考えていたのですが。俺の従妹が、今侍女としての奉公先を探しているんです。彼女に今回の一件を話して、あなたの家で侍女として働かせるのはどうでしょう。何かあった時にあなたをフォローしたり、俺との連絡役を務めてもらうんです」

「え、打ち明けるのですか」



 私は怯えたが、アルベール様は大丈夫だと言い張った。



「非常に口が堅くて、信頼できる子ですから。それに、機転も利きます。アンバーが辞めた直後だから、その補充という建前にすれば自然でしょう?」

「……まあ、アルベール様がそう仰るなら」



 少しためらったが、私は首を縦に振った。彼に任せていれば、間違い無い気がしたのだ。先ほどの、バルバラ様の発言を逆手に取ったことといい……。



「じゃあ、決まりですね」



 アルベール様も、ほっとしたような顔をされた。



「アフターフォローしていかないことには、いつボロが出るかわかりませんからね、この隠蔽工作。だからこうやって、あなたの家に出入りする許可をもらったわけですが。それでも、四六時中あなたと過ごすことはできませんから。この屋敷に、味方を潜入させたかったんです」



 あれ、と私は思った。



「もしかして、結婚の申し込みをされたのは、それが目的ですか? 断られるのを予想して?」
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