転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!

19

 帰りの馬車の中で、アルベール様は一言も口をきかなかった。屋敷に帰った後も、すぐにご自分の部屋にこもってしまわれた。私は仕方なく、自分の部屋に戻った。



(それは、そうよね……)



 いきなり、父親が国王陛下だ、と知らされただけでなく、王太子になれ、だなんて。誰だって、困惑するに決まっている。



(……それに)



 私には、アルベール様の悩みが痛いほどよくわかっていた。彼は未だに、自分の父親がバール男爵ではないかと疑っているのだ。陛下のお子でないかもしれないのに、王位など継げないと、真面目な彼ならそう考えるだろう。かといって、エレーヌ様の手記を見せれば、彼女の恥をさらすことになる。



(一体、どうすれば彼を救って差し上げられるの……!?)



 その時、遠慮がちなノックの音がした。侍女であった。



「モニク様に、お手紙でございます」



 差出人を見て、私は目を見張った。何と、デュポン侯爵からだったのだ。今さら何だろう、と私は慌てて開封した。



 手紙は、謝罪から始まっていた。



『先日は、無礼な態度を取って申し訳なかった。『あらゆる可能性を考え、調べ抜いてこそ、権威と言えるのでは』という貴女のお言葉が堪えましてな。この三日間、調べに調べたのでございます』



 まあ、と私は目を見張った。何と侯爵は、シモーヌ夫人の夫の主治医の元も訪れた、とのことだった。



『医師、薬師の方々とも意見交換し、またあらゆる歴史をひもといて、私は結論を導き出しました。確かにタバインには、男性の造精機能に障害をもたらす作用があります。過去にタバインを摂取した男性で、子を成した者はおりません……』



 私は、手紙を持って立ち上がっていた。
< 193 / 228 >

この作品をシェア

pagetop