転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!

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「アルベール様!!」



 話は、アルベール様のお部屋へ飛んで行った。激しくノックすると、彼は驚いた様子で姿を現した。



「どうしました? そんなに慌てて」

「アルベール様、これをご覧くださいませ」



 私は入室するなり、彼に手紙を突き出した。



「『タバインを摂取した男性で、子を成した者はおりません』……!?」



 アルベール様が、息を呑む。そして、差出人を確認された。



「デュポン侯爵!? ……もしやあなたは、彼にこのことを聞きに……?」



 はい、と私は大きく頷いた。



「実は私の前世では、男性が原因で子が成せないというケースが知られていました。ピエールが妻に宛てた手記を読んだ時、私はその可能性に思い当たったのです。それなら常用者だったバール男爵も、子を作れるわけがありません。ですが、それはあくまで推測。あなたをぬか喜びさせたくなくて、裏付けを取ろうとしていたのです」

「モニク……」



 感極まったように、アルベール様が私の名を呼ぶ。そして、左腕でぎゅっと私を抱きしめた。



「あなたは、最高の女性だ……。俺を、苦しみから救ってくださった……」

「私自身は、何も……。前世での知識のおかげですわ」



 言いながら、私は思った。ドニ殿下にも一つだけ感謝だ、と。あのむごたらしい殺人現場を目撃したことで、私は記憶を失い、同時に前世の記憶を取り戻した。あの体験が無かったら、私もデュポン侯爵同様、男性不妊という考えなど思いつきもしなかったことだろう。



「こうして、調べてくれたじゃないですか。前から、植物に詳しい人間を探していたのは、このためだったのですね」



 もう一度私をきつく抱きしめると、アルベール様は私を促して、ソファに座らせた。向かい合うと、彼は私を見つめて宣言した。



「これで、決心がつきました。王太子の道を選びます」
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