転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!

4

「ローズ! あなた、一体どうしてたのよ」



 思わず駆け寄ると、ローズは顔をしかめて後ずさった。



「嫌だわ、土まみれの姿で、近寄らないでくださる?」

「どうしていたのか、聞いているのよ」

「お義姉様に心配していただく必要は無いわよ」



 ふてくされたように、ローズが答える。相変わらずだわ、と私は脱力した。



「お父様は? どこにいらっしゃるか知らない?」

「知るもんですか! あんな男」



 ローズがわめく。自分を差し置いて、私をマルク殿下に嫁がせようとしたことを、まだ根に持っているのだろう。話にならないわ、と私はため息をついた。



「すみません、モニク様。迷ったのですが、モニク様の妹君ということで、お通ししたのです」



 そこへ、慌てたように執事がやって来た。



「庭にいらっしゃる、とお伝えしたところ、あっという間に走って行かれて……」

「そりゃそうよ。私は、モニク・ド・サリアンの妹なのよ。第二王子殿下のお妃の、ね」



 最後を強調しながら、ローズが胸を張る。そして、私をじろりと見た。



「で? いつまで妹を待たせるのかしら? お茶の一杯くらい、出していただけないの?」

「あのねえ、ローズ」



 さすがにカチンときた私は、ローズをにらみつけた。



「バルバラ様がなさったことは、知っているわよね? それについて一言の謝罪も無いどころか、心配した私に向かって、お礼どころかまともな返事すら無い。あげく、お茶を飲ませろですって?」

「あれは、お母様が勝手になさったことで……」



 ローズがうつむく。私は、さらに語気を強めた。



「王室入りしたとしても、このミレー家の方々は、私の家族よ。私が一言言えば、あなたはこの屋敷に永久出入り禁止。それどころか彼らは、あなたを社交界から追放する力だって持っているのよ?」

「……ごめんなさい」



 さすがに怯えたのか、ローズがしゅんとする。だがそれは一瞬で、彼女はパッと顔を上げた。



「用件を、先に申し上げるべきでしたわね! 実は私、お義姉様とアルベール様のご婚約祝いに参ったのですわ。一言だけ、ご挨拶申し上げてもよろしいかしら?」



 とってつけたような理由に、私は眉をひそめたが、ローズは小箱をいそいそと差し出した。



「ささやかですが、お祝いですのよ」



 プレゼントを持って来られた以上、何も出さないで追い返すわけにもいかない。私は仕方なく、ローズを応接間に通すことにしたのだった。
< 199 / 228 >

この作品をシェア

pagetop