転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!
10
「……突然、何を言い出すのだ、エミール」
一瞬絶句された後、ミレー公爵はにこやかにそう仰った。
「今回のアルベールのことで、邪推したか? だが安心せよ。お前は、確かに私たちの……」
「これを見たのです」
エミールは、古びた封筒を懐から取り出した。そのとたん、アルベール様は血相を変えられた。
「――お前!! それを勝手に見たのか!」
「兄様が、チェストの引き出しの中を、見られたくなさそうだったから」
気まずそうに、エミールが答える。
「てっきり、いやらし……興味深い書物でも隠してらっしゃるのかと、気になったんです。今日は、四人ともご不在でしょう? それでその隙に、こっそり見たのです。鍵は、この前兄様が鎮痛剤で眠ってらっしゃる隙に、くすねました」
アルベール様が、呆れ顔になる。
「だけど俺は、あの後念のため、隠し場所を変えたはずだぞ? もしや、部屋中漁ったのか!」
「……すみません」
エミールがうなだれる。ミレー公爵は、アルベール様に尋ねられた。
「一体、何だというのだ?」
「私が十三の年に、テレザ嬢がこの屋敷へ来られたことがあったでしょう。その後、彼女から私宛に礼状が来たのですよ。隠していたのですが……」
アルベール様は、エミールから封筒を受け取ると、中から便せんを取りだした。夫妻と私に向かって、広げて見せる。手紙には、こう綴られていた。
『親愛なるアルベール様。
先日はありがとうございました。我が子を手放した私に、そんな資格は無いとわかっているのですが、一目エミールを見ることができて嬉しかったです。
あの子がミレーご夫妻にすっかり懐いてくれていて、安心しました。まるで、実の親子のようですわね。そしてアルベール様、あなたにも。良きご両親と良き兄上に恵まれて、あの子は幸せ者ですわ。
どうぞ、末永くエミールをよろしくお願いいたします。
テレザ』
エミールが、おそるおそるといった様子で尋ねる。
「このテレザという人が、僕の本当の母様なのですか」
ミレー夫妻は、顔を見合わせた後、頷かれた。
「……その通りだ。今まで隠していて、すまなかった……」
間髪入れずに、エミールが尋ねる。
「では、父様は?」
一瞬絶句された後、ミレー公爵はにこやかにそう仰った。
「今回のアルベールのことで、邪推したか? だが安心せよ。お前は、確かに私たちの……」
「これを見たのです」
エミールは、古びた封筒を懐から取り出した。そのとたん、アルベール様は血相を変えられた。
「――お前!! それを勝手に見たのか!」
「兄様が、チェストの引き出しの中を、見られたくなさそうだったから」
気まずそうに、エミールが答える。
「てっきり、いやらし……興味深い書物でも隠してらっしゃるのかと、気になったんです。今日は、四人ともご不在でしょう? それでその隙に、こっそり見たのです。鍵は、この前兄様が鎮痛剤で眠ってらっしゃる隙に、くすねました」
アルベール様が、呆れ顔になる。
「だけど俺は、あの後念のため、隠し場所を変えたはずだぞ? もしや、部屋中漁ったのか!」
「……すみません」
エミールがうなだれる。ミレー公爵は、アルベール様に尋ねられた。
「一体、何だというのだ?」
「私が十三の年に、テレザ嬢がこの屋敷へ来られたことがあったでしょう。その後、彼女から私宛に礼状が来たのですよ。隠していたのですが……」
アルベール様は、エミールから封筒を受け取ると、中から便せんを取りだした。夫妻と私に向かって、広げて見せる。手紙には、こう綴られていた。
『親愛なるアルベール様。
先日はありがとうございました。我が子を手放した私に、そんな資格は無いとわかっているのですが、一目エミールを見ることができて嬉しかったです。
あの子がミレーご夫妻にすっかり懐いてくれていて、安心しました。まるで、実の親子のようですわね。そしてアルベール様、あなたにも。良きご両親と良き兄上に恵まれて、あの子は幸せ者ですわ。
どうぞ、末永くエミールをよろしくお願いいたします。
テレザ』
エミールが、おそるおそるといった様子で尋ねる。
「このテレザという人が、僕の本当の母様なのですか」
ミレー夫妻は、顔を見合わせた後、頷かれた。
「……その通りだ。今まで隠していて、すまなかった……」
間髪入れずに、エミールが尋ねる。
「では、父様は?」