転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!

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「僕は、陛下のその夢に、すごく感銘を受けたのです!」



 熱っぽく、エミールが語る。



「その時はまさか、自分が国王陛下の子とは思いませんでしたから。だから、父様、兄様みたいに王立騎士団に入って、陛下をお支えしようと思いました。でも今や、こういう立場とわかって、僕は決意したんです。自ら陛下の跡を継ぎ、その夢をこの手で実現して差し上げたいと」



 アルベール様は、黙って聞いておられたが、やがて頷かれた。



「お前の思いは、よくわかった。でもそれは、俺が許可する話じゃない。まずはミレーの父上に、そしてマルク殿下にご相談して、最終的には陛下ご自身がお決めになることだ。今日はもう遅いから、寝なさい。明日、父上母上も含めて、皆で話し合おう」



「わかりました。ありがとうございます!」



 エミールは、ぴょこりと頭を下げた。アルベール様が、クスリと笑われる。



「けれど、王太子教育なんぞ、きついぞ。お前に耐えられるのか?」

「今回の捜し物に比べれば、楽勝でしょ」



 負けじと、エミールが言い返す。



「なかなか見つからないから、意地になりましたよ……。一体、どこにそういう書物を隠されているんです?」

「だから、そんな物は持ってないと言ってるだろう! 俺は実地派なんだよ」

「あー、そういえば兄様、文学は苦手でしたもんね。納得です」

「生意気を言うな」



 アルベール様が左腕を伸ばし、エミールの頭を叩こうとする。だが、エミールが避ける方が早かった。すばしっこく扉の方へ走りながら、彼がなおも言う。



「捜し物は見つからなかったけど、おかげで発見がありましたよ。兄様は大事な物を、下から二番目と三番目の引き出しに隠しがちってこと」

「このっ……!」



 アルベール様は、ベッドから抜け出してエミールを追いかけようとしたが、その拍子に肩を痛めたらしい。患部を押さえて、立ち止まった。



 その隙に、エミールが部屋を飛び出して行く。私は、アルベール様をじろりとにらみつけた。



「『実地派』でございますか」



 アルベール様が、びくっと体を震わせる。 
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