転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!

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 結婚式当日は、晴天に恵まれた。コレットをリーダーとする侍女たちに着付けをしてもらいながら、私は式典でのことを思い出していた。



 二日前の、ジョゼフ五世陛下ご即位二十五周年記念式典にて、エミール・ド・ミレーが陛下の実のお子であること、マルク殿下に次ぐ第二王子として迎えられることが、正式に発表された。エミールは、実に堂々とスピーチをこなして、それはよかったのだけれど……。



 ジョゼフ五世陛下はその際、『モルフォア王国を植物大国とする』と宣言なさったのだ。モルフォア王国は元々、希少植物が生育するので有名だ。ならばそれを活かさない手は無い、大規模な国立庭園を造って観光名所とする、と陛下は仰った。まさにそれが、エミールと彼の母親に語っておられた、陛下の夢だったのである。



 そしてその庭園の、園長兼主任研究員には、デュポン侯爵が任命された。彼は私に、是非研究助手を務めて欲しいと仰った。アルベール様も賛成してくださって、私はその話をお受けしたのである。



「モニク、ぼーっとしている場合では無いわよ!」



 コレットが叱咤する。



「植物学研究の助手というのも、立派な役割ですけれど。まずあなたが果たされるべき役割は、今日の結婚式の主役です。植物のことは、いったん頭から離してくださいまし!」

「え!? あっ、はい」



 慌てて頷けば、コレットははーっとため息をついた。



「ダメだ、こりゃ。さては完成したのにも、お気付きでなかったですわね?」

「もう終わったの?」



 コレットは、ますます呆れ顔をした。他の侍女たちもだ。



「とにかく、鏡をご覧なさいませ!」



 姿見の前に、強引に連れて行かれる。私は、目を見張った。



(これが、あの地味で冴えなかったモニクかしら?)



 コンプレックスだった赤毛は華麗に結い上げられ、ゴールドのアクセサリーとも相まって、華やかな雰囲気を醸し出している。やや濃いめのメイクと、髪色に合わせた深紅のルージュが、それに拍車をかけていた。



 そして、その髪色と対照的なのが、鮮やかなグリーンの下地のドレスだ。これは、ミレー夫人のお見立てである。最初は派手すぎやしないかと思ったのだが、意外にも美しいコントラストを生み出している。赤と緑が、互いの魅力を高め合っているようだった。さらには、一面に施された金の刺繍が、ゴージャス感を増していた。



「素敵ですわ」



 侍女たちが、一様に頷く。するとコレットは、ぽんと手を叩いた。



「というわけで、花婿にご披露しましょう。先ほどから、待ちかねてますわよ!」
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