転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!

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 教会での挙式は、何だかあっという間だった。誓いの言葉を述べ、キスを交わし、皆から祝福の言葉をいただいて。終始、夢の中をさまよっているようだった。



 その後私たちは、すぐにミレー邸へと戻った。広間でパーティーを行うためだ。ジョゼフ五世陛下からは、お祝いのお言葉と、山のような贈り物が届いていた。早速王太子教育が始まるエミールは来れないとのことだったが、モンタギュー侯爵やコレットを始めとする親しい方々がこぞって駆け付け、賑やかな雰囲気だ。



 私とアルベール様は、出席者たちと次々に挨拶を交わした。その多くは、王立騎士団の方々である。モンタギュー侯爵が団長に昇格された後、空席になった副団長のポストには、アルベール様が決まったのだ。元々、後任には彼が考えられていた。急に持ち上がった王室入りで一度はかき消えたものの、その話が無くなったことで、やはりアルベール様に決定したのである。二転三転したものの、アルベール様の活躍は皆が認めるところであり、異を唱える者は一人もいなかった。



「お怪我の具合は、もうよろしいので?」

「お早い復帰を、お待ちしております!」



 アルベール様をたいそう慕っているらしい騎士らは、いつまでも彼と話したがっている様子だ。私は、一足先にその場を離れた。すると、デュポン侯爵がやって来られた。



「モニク嬢……、いえ、もうミレー夫人ですな。この度は、本当に感謝申し上げる。助手の件、お引き受けいただいて」



 満面の笑みで、侯爵が仰る。するとアルベール様が、スッと間に入って来られた。いつの間に、騎士たちを振り切られたのか。



「デュポン様、妻がお世話になることと存じます。ついてはその件で、ご相談が。私どもミレー家は、デュポン様のご研究を非常に応援申し上げているのですよ。そこで、ミレー邸の離れを改装して、研究所としてご提供いたそうと考えておるのですが。いかがでございましょう?」



 いや、初耳なのだけれど。一方侯爵は、ほう、と目を輝かせた。



「大変ありがたいお申し出ですな。……しかし、そんなことをしていただいて、よろしいので?」

「とんでもありません。是非そこで、妻と心ゆくまで研究に励んでいただきたい」



 言いながらアルベール様は、威圧するような目で私をご覧になった。



(ああ、そういうことですのね……)



 私をデュポン侯爵の屋敷へ行かせるのを、警戒なさっているのだろう。彼の目の届く所でやれ、というお考えに違いない。
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