転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!
11
「できるだけ、早く返していただけませんか? あれは、母の形見なのです」
私はモンタギュー侯爵にすがったが、彼の返事は素っ気なかった。
「それは、捜査状況次第です。では、本日はこれで。ご協力ありがとうございました」
侯爵と騎士たちが、退室される。お見送りするつもりだろう、モーリスも出て行った。アルベール様は、ドニ殿下をチラと見やると、私に告げた。
「疑われてお辛いでしょうが、元気を出してくださいね。お側にいて差し上げたいところですが……。あいにく、これから男爵と夫人の葬儀に参列しなければいけませんので」
「あら、そうなんですの?」
私は、目を見張った。ミレー家とお二人は、それほど親しいわけでも無いのに。
「父の代理なのですよ。では、これで。殿下、失礼いたします」
アルベール様は、いともあっさりと出て行かれてしまった。二人きりになると、ドニ殿下は気遣わしげに私をご覧になった。
「大丈夫ですか」
「ええ……。あ、お茶でも召し上がりますか? 今、持って来させましょう」
私はメイドを呼ぼうとしたが、殿下は押し止められた。
「お気遣い無く。……ところで」
ドニ殿下は、アルベール様が出て行かれた扉を、不快そうに見つめた。
「モニク嬢がお付き合いしている男性を、悪く言いたくはないのですが。アルベール殿は、何を考えておられるのだろう。あなたが大変なこんな時に、男爵たちの葬儀を優先するだなんて。大して親しかったわけでも、ないでしょうに」
「ミレー家のご事情があるのでしょう」
そうは言ってみたものの、私も、一抹の寂しさを覚えずにはいられなかった。もう少し居てくれても、と思ったのだ。所詮は、偽りの恋人ということか。
「それにしたところで……。少々、配慮に欠けますよ。ブローチの件にしたところで、そうだ。あんな風にあけすけに語るなど……」
アルベール様の言葉を思い出した私は、思わず赤くなった。殿下は、そんな私をじっとご覧になった。
「モニク嬢。これは、お伝えするべきか迷ったのですが。あのパーティーの夜のことです」
「――何ですの?」
私は、身構えた。
「確かにあの夜、あなたとアルベール殿は姿を消しておられた。そして、殺されたバール男爵とシモーヌ夫人は、それより前から姿が見えませんでした。さらに、僕の記憶が正しければですが……。アルベール殿は、あなたがいなくなられるよりずっと前から、パーティー会場にはいらっしゃらなかったのですが。単にあなたと密会されるだけにしては、時間差が大きすぎるように感じたのです。……一体、この誤差は何でしょうね?」
私はモンタギュー侯爵にすがったが、彼の返事は素っ気なかった。
「それは、捜査状況次第です。では、本日はこれで。ご協力ありがとうございました」
侯爵と騎士たちが、退室される。お見送りするつもりだろう、モーリスも出て行った。アルベール様は、ドニ殿下をチラと見やると、私に告げた。
「疑われてお辛いでしょうが、元気を出してくださいね。お側にいて差し上げたいところですが……。あいにく、これから男爵と夫人の葬儀に参列しなければいけませんので」
「あら、そうなんですの?」
私は、目を見張った。ミレー家とお二人は、それほど親しいわけでも無いのに。
「父の代理なのですよ。では、これで。殿下、失礼いたします」
アルベール様は、いともあっさりと出て行かれてしまった。二人きりになると、ドニ殿下は気遣わしげに私をご覧になった。
「大丈夫ですか」
「ええ……。あ、お茶でも召し上がりますか? 今、持って来させましょう」
私はメイドを呼ぼうとしたが、殿下は押し止められた。
「お気遣い無く。……ところで」
ドニ殿下は、アルベール様が出て行かれた扉を、不快そうに見つめた。
「モニク嬢がお付き合いしている男性を、悪く言いたくはないのですが。アルベール殿は、何を考えておられるのだろう。あなたが大変なこんな時に、男爵たちの葬儀を優先するだなんて。大して親しかったわけでも、ないでしょうに」
「ミレー家のご事情があるのでしょう」
そうは言ってみたものの、私も、一抹の寂しさを覚えずにはいられなかった。もう少し居てくれても、と思ったのだ。所詮は、偽りの恋人ということか。
「それにしたところで……。少々、配慮に欠けますよ。ブローチの件にしたところで、そうだ。あんな風にあけすけに語るなど……」
アルベール様の言葉を思い出した私は、思わず赤くなった。殿下は、そんな私をじっとご覧になった。
「モニク嬢。これは、お伝えするべきか迷ったのですが。あのパーティーの夜のことです」
「――何ですの?」
私は、身構えた。
「確かにあの夜、あなたとアルベール殿は姿を消しておられた。そして、殺されたバール男爵とシモーヌ夫人は、それより前から姿が見えませんでした。さらに、僕の記憶が正しければですが……。アルベール殿は、あなたがいなくなられるよりずっと前から、パーティー会場にはいらっしゃらなかったのですが。単にあなたと密会されるだけにしては、時間差が大きすぎるように感じたのです。……一体、この誤差は何でしょうね?」