転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!

12

(そうだったの……!?)



 記憶が無い以上、うかつに否定も肯定もできない。私は、慎重にお答えした。



「そうなのですか? 逢い引きの予定がバレないよう、彼の方はなるべく見ないようにしていましたので。そこまで気付きかねましたが」

「そうですか」



 ドニ殿下が、静かに頷かれる。その表情は読み取れなかった。



「怒らないで、聞いていただきたいのですが。先ほどからお話を伺うに、アルベール殿は、ずいぶん激しいご性格とお見受けしたのです。あなたとずっと一緒にいたと、あなたのアリバイを証言なさっておられるが。それは逆に言えば、彼のアリバイにもなりますよね」

「何を仰りたいんです!?」



 相手は殿下だというのに、私はカッとなるのを抑えられなかった。



「アルベール様が殺した、そう仰りたいんですの?」

「断定しているわけではありません。一つの可能性です」



 冗談じゃない、そう言おうとして、私はふと気が付いた。そもそもアルベール様は、なぜ私が倒れているあの場にいらしたのだろう。その点が、まだ不明ではないか……。



(いえ、そんなはず無いわ)



 私は、思い直した。もしアルベール様が犯人なら、わざわざ私を助けるはずが無い。私に罪をなすりつければ、それで済む話なのだから……。



 ドニ殿下は、黙り込む私をじっと見つめていらっしゃったが、やがてふっと笑われた。



「まあ、万が一彼が犯人だとしたら、気持ちもわからなくは無いですがね」

「それは、どういう……」

「僕が今、まさに同じ思いだからです。愛する女性が他の男のものになるというのは、ひどく悔しいものですね」



 殿下は、つかつかと私に近付かれると、不意に私の手を取られた。



「正直に、申し上げましょう。以前から、あなたを想っていました。バール男爵との結婚が決まられたときは残念だったけれど、諦める他ありませんでした。ですがアルベール殿とは、まだ婚約されたわけではないのでしょう? でしたら、僕にもまだ機会はありますね。考えてみていただけませんか?」

< 40 / 228 >

この作品をシェア

pagetop