転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!

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(ドニ殿下、本気で仰ってるの……!?)



 殿下の瑠璃色の瞳は、真っ直ぐに私を見つめていらっしゃる。かつての私なら、飛び上がって喜んだことだろう。だって私は、ずっと殿下に憧れていたのだもの。



(でも……、ダメだわ)



 今の最優先事項は、殺人の嫌疑を完全に晴らすことだ。そのためには、アルベール様との偽装恋愛関係を続けなければいけない。



(……それに)



 それだけでは無かった。私はアルベール様に、確実に惹かれ始めていたのだ。時々口はお悪いけれど、頼もしくて、いざという時には助けになってくださる。ご自身の、出生のことまで明かされて……。



「殿下、お気持ちは大変ありがたいのですが。でも私は、アルベール様を愛しております。そして、彼が殺人など犯すはずは無いと、信じておりますわ」



 勇気を出してきっぱり申し上げたのだが、殿下はなかなか私の手を放してくださらなかった。



「ですが、婚約関係では無いのでしょう? そのお話は保留になった、と漏れ聞きました。ならば僕も、彼と同じ立ち位置ですね」

「殿下……」

「アルベール殿は、サリアン邸を訪れる許可を、あなたのご両親からいただいたとか。僕も、同じお願いをいたしましょう。あなたが心配でもありますしね」



 弱ったなあ、と私は思った。王子殿下にそう言われたら、お父様も断れるわけが無いではないか。マルク殿下とセットなら、バルバラ様は諸手を挙げて歓迎されるだろうし。



「僕なら、あなたがご不安な時に放り出したりはしませんよ。ずっとお側にいて、守って差し上げましょう」



 ドニ殿下はそう仰って、私の手の甲に軽くキスをされたのだった。
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