転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!

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「それは、男性ですか、女性ですか?」



 モンタギュー侯爵が、ドニ殿下にお尋ねになる。さあ、と殿下は首をかしげられた。



「事件の翌日、こちらへ弔問に訪れた際、門番がペラペラと喋っていたのですよ。まだ手袋とショールが出て来る前だったので、私もうっかり聞き流しておりました」

「ガストンめ……」



 お父様は、歯ぎしりされた後、ハッとしたような顔をされた。



「モンタギュー様、失礼いたしました。これ以上、娘に疑いがかかってはと、言えずにいたのです」

「いえ。ドニ殿下が仰った通り、モニク嬢に濡れ衣を着せる一環でしょう……。すぐに、門番を呼んでください」



 だがお父様は、力無くかぶりを振った。



「すみません。ガストンは……門番は、今休暇を取って、郷里に帰っているのです。本当です。でも、明日には戻りますから」

「明日ですか。でしたら明日、もう一度こちらへ参ります。そしてその門番から、じっくり話を聞かせてもらいましょう。アンバー殺しの夜のアリバイの件も含めて、ね」



 モンタギュー侯爵にじっと見つめられ、私は静かに頷いた。



「私には、何も疚しいことはございません。何なりと、聞いていただければと思います。……そして真犯人を捕らえ、アンバーや男爵、夫人の無念を晴らしていただきたいですわ」

「承知いたしました」



 侯爵が、うやうやしくお辞儀をされる。その瞳からは、もうすっかり私への疑念は消えていて、私は少しだけ安堵したのだった。
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