転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!

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 目の前が、真っ暗になった。



(まさか、本当にアルベール様が……)



 この三日間、彼への疑念は何度となくよぎった。その度に、打ち消してきたのだ。アルベール様が、そんな真似をなさるはずが無いと……。とても目を合わせていられず、私は下を向いた。



 だが、アルベール様は、意外な言葉を続けた。



「でも、殺していません」

「――え?」



 私は、弾かれたように顔を上げた。



「俺はあのパーティーの最中、オーギュストを殺す機会を窺っていました。すると、彼が一人で会場を抜け出るのを見かけたのです。チャンスとばかりに、俺は彼を追いました。しかも都合がいいことに、オーギュストはどんどん、人気の無い方向へ進んで行く。そして、とある部屋へ入りました。……例の、現場となった客間です」

「……それで?」



 私は、手に汗を握るのを感じた。



「俺はすぐに、追いかけて入ろうとしました。ところがその時、廊下の反対側から、シモーヌ夫人がやって来るのが見えたのです。身を隠して様子を窺っていると、夫人は、オーギュストが入った同じ部屋へ入って行きました」



 アルベール様は、ため息をつかれた。



「婚約披露パーティーの最中に浮気か、と呆れましたよ。いずれにせよ、夫人の登場は想定外でした。関係無い彼女を巻き込むわけにはいかないので、俺は諦めて、いったんパーティー会場へ戻ったのです」



 ドニ殿下が仰っていた、アルベール様が長らく会場を離れていた、というのは、その間のことだったのだろう。アルベール様が、淡々と続けられる。



「二人が戻ったら、改めてオーギュストを狙おうと、俺は会場で待機していました。すると、あなたが」



 アルベール様は、私を見つめられた。



「そわそわしながら、会場を出て行かれるのを目にしたのです。どうやら、婚約者であるオーギュストを捜しているようだ。彼がシモーヌ夫人と逢い引きしているところを目撃したら、あなたはさぞショックを受けるだろう。それを防ごうと、俺はあなたを追いかけたのです。……しかし、たどり着いてみると」



 アルベール様は、何とも言えない表情をなさった。



「あなたは、あの客間の前で倒れていた。そして室内には二人の死体があったと、そういうわけです」
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