人肉病
感染しているとか、していないとか、そんなことは関係ない。
そんな次元に私達は存在していない。
そう、思いたかった。

でも……。
私はそっと圭太の身から離れた。
私はもう人肉の美味しさを知ってしまった。

無意識の内に圭太の頬を舐めてしまったということは、無意識の内に圭太を襲う可能性だってあった。
それだけは避けないといけない。
圭太だけは、守りたい。


「私は、圭太のその気持だけで生きていける」

「薫?」


次の言葉を感づいたように圭太が不安げな表情を浮かべる。


「そんな顔しないで、笑っていて」


私は圭太の頬に手を伸ばして両手で包み込んだ。
とてもあたたかくて、優しい体温をしている。
でも、圭太に触れるのはこれで最後にしようを思っていた。
これ以上一緒にいることはできない。


「別れよう、圭太」
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