人肉病
そこは広い和室になっていて、中央にキングサイズのベッドが置かれている。
夫婦の寝室だったのかもしれない。

私はベッドに腰をかけてタッパーを開ける。
中から芳醇な肉の香りが漂い出てきてぐぅとお腹が鳴った。
キッチンから拝借してきた誰かの箸で肉片をつまみ上げて口に入れると、とろけるような舌触りに思わず笑みがこぼれた。
感染前にだって食べたことのない、上質な肉の味わいだ。

ゆっくりと味わうように咀嚼して、飲み下す。
私の食欲は日に日に強くなってきていて、タッパーの中身はあっという間になくなってしまった。
これだけの量の生肉を食べたのに、まだ食べたりない気持ちだ。

それをグッと押し込めてリビングへ戻ると、圭太も食事を終えたところだった。
今はリビングのテレビを付けてニュース番組を確認している。
ニュースで流れているのはこの街を空から移した映像で、ニュースキャスターはガスマスクを着用している。


『もう1歩たりともこの街に踏み入ることはできません。医療は崩壊し、新薬の開発もまだです』
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