人肉病
『あぁ。会社にいる』

「もしかして、外に自衛隊がいて出られないとか?」


その質問に父親は無言になった。
その沈黙は肯定を意味している。
昼までの自分と同じ状況にあるとわかって、胸が痛む。
けれど外へ出た今は、建物内にいるほうがいいのか、外へ出たほうがいいのかわからなくなってしまった。


「お父さん、感染は?」


大きく息を吸い込んでそう質問をする。


『お父さんは大丈夫だ』


その言葉に安堵しかけたけれど、答えになっていないことに気がついた。
大丈夫というのはどのようにでも捉えることのできる便利な言葉だ。
お父さんはすでに感染ししてるけれど、それでも大丈夫だ心配するなといいたいのかも知れない。


「そっか。よかった」


それ以上深堀せずに素直に引き下がる。
娘に心配はかけたくないだろうから。
こころなしかホッとしたような雰囲気が電話越しにでもわかった。


「お母さんとは連絡が取れた?」

『あぁ。昨日電話した』
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