人肉病
☆☆☆

こうして一緒にいても圭太に食事を作ってあげることもできない。
通常の食事の匂いだけで吐き気を覚える私は高い生け垣のある庭に出てきていた。


「一緒に食事ができればいいのにな」


そう呟いてみても体にウイルスがある限り無理な問題だった。
私と圭太の食事は決定的に違いすぎる。

ボンヤリと空を見上げている間にも道路から人の悲鳴や怒号が聞こえてくる。
ここは生け垣に囲まれているから姿を見られる心配もないけれど、一歩玄関から外へ出ればどうなるかわからない。
自分の食料を調達するためには時間を見計らったほうが良さそうだ。

「薫」


呼ばれて振り向くと窓から圭太が顔をのぞかせていた。
食事を終えたのだろう。


「この家の中を調べてみようと思うんだ」


リビングへ戻るとそう言われた。
そう言えば昨日ここへ来てからあまり家の中を調べたりはしなかった。

人の気配もないし、疲れていたし、今思えばあまりの警戒心のなさに我ながら呆れてしまう。
万が一この家に誰かがいれば、どちらかが、または両方が殺されていた可能性だってある。
家は広く、外観からすれば2階建てのようだった。
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