人肉病
必死に説明する男性の目は血走り、顔は苦痛に歪んでいる。


「頼む! 拘束を解いてくれ! 助けてくれ!」


懇願する男性に心が揺れる。
同時に男性から感じる美味しそうな匂いにも反応していた。
お腹がぐぅと音を立てる。


「なにぼーっとしてんだよ! 早く助けてくれ!」


男性は私達がふたりとも感染していないと思い込んで絶叫を続ける。
けれど、それに答えることはできなかった。
圭太がチラリと私を見て、小さく頷く。

私は握りしめていたバッドを振りかぶった。
男性が目を見開く。
その顔は出現した希望が一瞬して消えていくような、絶望感に満ちたものだった。


「ごめんなさい」


私は男性にそう声をかけて、頭部へ向けてバッドを振り下ろしたのだった。
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