その首輪はお断りします!【マンガシナリオ】
第2話 平穏な高校生活のために
〇翌朝、翼の部屋

 新しい制服に身を包んだ翼は、少しだけ扉を開けて廊下を見る。その表情は緊張していた。

翼(よし、居ない──)

 突然、ガッ、と隙間から出てきた手が扉を掴む。

翼「ひゃあ!?」

 ぬっと隙間から覗く瞳に、肩がビクッとなる翼。扉を閉めようとするが、外側から強い力で扉を開けられてしまった。

 部屋の前には、朝の気だるげな雰囲気を纏った、色気がただよう綾人が。
 綾人も、真新しい制服に身を包んでいる。
 制服がとんでもなく似合っている綾人を見て、顔を赤くする翼。

翼(くっ、カッコいいのが腹立つって何この感情!)
綾人「おはよ、翼ちゃん」
翼「お、おはようっ綾人君」
 
 少し声が裏返る翼。
 挨拶が終わっても、そこから一歩も動かない翼を見てふっと鼻で笑う綾人。

綾人「そんなに警戒しなくても」
翼「警戒なんてしてませんけど?」 

 ぐぬぬ、と綾人を見上げる翼。

綾人「ふーん?」

 綾人は興味なさげに返事をして、先に階段をおりていく。
 翼は綾人を警戒してか距離をとっていて、まだ階段を降りていない。

 階段をおりた綾人が、下で手を広げて「おいで」と言う。
 その瞬間、翼の頭に浮かんだ光景。
 「ほらおいで〜」とペット呼ぶ飼い主と、嬉しそうにそこへ飛び込んでいく犬。

翼(私は犬か!!)

 怒った翼は、一人でササッと階段をおりる。
 
綾人「つれないな。ペットはもっと愛想良くしなきゃ、翼ちゃん」

 その言葉に、ガルルルと綾人を睨む翼。
 しかし綾人は、ニヤリと「調教のしがいがある」とでも言うような笑みを浮かべた。

翼(きー! いちいち癪に触るんだけどその笑顔!)
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