S系外科医の愛に堕とされる激甘契約婚【財閥御曹司シリーズ円城寺家編】
「――和葉お嬢さんこそ。無理した笑顔なんて……らしくないですよ」
「えっ」

 安吾は心配そうに眉をひそめて、続ける。

「なにがあったんですか? 今日はずっと、泣きそうな顔をしてる」

 まっすぐな彼の眼差しに、嘘はつけなかった。

「さすが安吾くん。なんでもお見通しだね」

 ほんの一瞬、安吾に相談してみようかと思ったけれど、すぐにそれは違うなと思い直した。

(誰かの意見を聞く前に、自分の気持ちを整理しないと)

 自分がどうしたいかもわからないのに、相談しても意味がない。

「ありがとう。ちょっと考えないといけないことがあって……でも大丈夫だから!」

 安吾は少し寂しそうな笑みを浮かべた。

「和葉お嬢さんは昔からがんばり屋でしたもんね。けど……どうしてもつらくなったら、そのときはここに帰ってきてください」

 安吾は真剣な目で和葉を見つめた。

「――俺はずっと、待ってますから」

 言葉以上の思いが込められている。そう感じたのは、自惚れだろうか。

「えっ、その……」
「本気ですよ」

 その瞳は熱っぽく、これまで和葉が接してきた〝安吾くん〟とは別人のように見えた。

(やっぱり、そういう意味なの?)

 和葉は彼との関係を〝兄妹同然〟と思ってきたけれど、安吾のほうは違ったのか。

『け、結婚って……安吾とか?』

 結婚を報告したときの、育郎の反応を思い出す。
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