S系外科医の愛に堕とされる激甘契約婚【財閥御曹司シリーズ円城寺家編】
見合い当日。ノーブルなダークグレーのスーツに身を包んだ柾樹は時間よりずいぶん早く、芙蓉の前に立った。父親の芳樹は今日も海外滞在中のため欠席。母親の寧々とこの縁談の仲人的立場であるハトコが同席する予定になっているが、ふたりに断りを入れて柾樹はひとりだけ先に来たのだ。
芙蓉は老舗らしい風格のある門構えの、よさそうな店だった。
裏口からゴミ袋を抱えたひとりの女性が出てくる。柾樹の目は彼女に釘付けになる。
さすがにもうおかっぱ頭をしてはいないが、艶やかな黒髪はあの頃と同じ。くりっとした大きな目も、丸い頬も、全身からにじみ出る明るいオーラも。
「和葉だ……」
彼女はゴミを置くと、すぐになかに引っ込んでしまった。それでも、柾樹はしばらくその場から動けなかった。
頬をひと筋の涙が伝う。彼女の元気な姿が見られただけで、喜びに心が震えて、思わず涙がこぼれた。
(ほかの女と結婚できるなんて、ちらりとでも思った俺が馬鹿だった。俺は……まだ、こんなにも……)
自分が誰を愛しているのか、ほんの一瞬の邂逅だけで思い知らされた。
沙月には誠心誠意の謝罪をして、この縁談は断ろう。柾樹はそう決意した。
腹が決まると、待ち合わせ時間まですることもなく手持ち無沙汰だった。自販機で飲みものでも買おうかと、大きい通りに出ようとしたところ、振り袖を着た女性の後ろ姿が目に留まり、柾樹は足を止めた。
芙蓉は老舗らしい風格のある門構えの、よさそうな店だった。
裏口からゴミ袋を抱えたひとりの女性が出てくる。柾樹の目は彼女に釘付けになる。
さすがにもうおかっぱ頭をしてはいないが、艶やかな黒髪はあの頃と同じ。くりっとした大きな目も、丸い頬も、全身からにじみ出る明るいオーラも。
「和葉だ……」
彼女はゴミを置くと、すぐになかに引っ込んでしまった。それでも、柾樹はしばらくその場から動けなかった。
頬をひと筋の涙が伝う。彼女の元気な姿が見られただけで、喜びに心が震えて、思わず涙がこぼれた。
(ほかの女と結婚できるなんて、ちらりとでも思った俺が馬鹿だった。俺は……まだ、こんなにも……)
自分が誰を愛しているのか、ほんの一瞬の邂逅だけで思い知らされた。
沙月には誠心誠意の謝罪をして、この縁談は断ろう。柾樹はそう決意した。
腹が決まると、待ち合わせ時間まですることもなく手持ち無沙汰だった。自販機で飲みものでも買おうかと、大きい通りに出ようとしたところ、振り袖を着た女性の後ろ姿が目に留まり、柾樹は足を止めた。