S系外科医の愛に堕とされる激甘契約婚【財閥御曹司シリーズ円城寺家編】
(もしかして、久野沙月か?)
顔は確認できないが、スッと伸びた背筋に育ちのよさを感じた。それに、紺地の振り袖は量産品ではなく作家の手によるものだろう。彼女は誰かと電話をしているようだ。通りを走る車の音で話し声が聞こえなかった。だが……大通りの信号が赤になった瞬間、彼女の凛とした声が柾樹のもとにも届いた。
「さようなら。でも、ずっと……愛しているから」
柾樹は目をパチパチと瞬き、それからフッと小さく噴き出す。その声が聞こえてしまったのか、通話を終えた彼女がこちらを振り返る。
「あ……」
彼女と目が合う。沙月のほうも、身なりや雰囲気から柾樹が今日の縁談の相手であることを察したのだろう。彼女は赤くなった目元をこすりながら、柾樹に頭をさげた。
「も、申し訳ございません」
(ほかに好きな男がいるのに、断れない縁談を無理やり押しつけられた……ってとこか。俺は悪役だな)
久野家は医薬品メーカーを経営している。立場上、円城寺との縁談を断ることなどできないだろう。
どうやら初めから、柾樹と沙月の糸はつながっていなかったようだ。
柾樹は彼女のもとに歩を進め、声をかけた。
「なんとなく、事情は理解しました。そういうことなら、俺に任せてください」
「え……」
困惑する彼女に計画を説明してから、踵を返す。
「俺は誰よりもかっこよくて、誰よりも強い」
顔は確認できないが、スッと伸びた背筋に育ちのよさを感じた。それに、紺地の振り袖は量産品ではなく作家の手によるものだろう。彼女は誰かと電話をしているようだ。通りを走る車の音で話し声が聞こえなかった。だが……大通りの信号が赤になった瞬間、彼女の凛とした声が柾樹のもとにも届いた。
「さようなら。でも、ずっと……愛しているから」
柾樹は目をパチパチと瞬き、それからフッと小さく噴き出す。その声が聞こえてしまったのか、通話を終えた彼女がこちらを振り返る。
「あ……」
彼女と目が合う。沙月のほうも、身なりや雰囲気から柾樹が今日の縁談の相手であることを察したのだろう。彼女は赤くなった目元をこすりながら、柾樹に頭をさげた。
「も、申し訳ございません」
(ほかに好きな男がいるのに、断れない縁談を無理やり押しつけられた……ってとこか。俺は悪役だな)
久野家は医薬品メーカーを経営している。立場上、円城寺との縁談を断ることなどできないだろう。
どうやら初めから、柾樹と沙月の糸はつながっていなかったようだ。
柾樹は彼女のもとに歩を進め、声をかけた。
「なんとなく、事情は理解しました。そういうことなら、俺に任せてください」
「え……」
困惑する彼女に計画を説明してから、踵を返す。
「俺は誰よりもかっこよくて、誰よりも強い」